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AIコラム

ChatGPTの画像生成機能のアップデートについて(ジブリ風画像の生成に感じるAIの危うさ)

更新日: 2025/04/24 公開日: 2025/04/07
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ChatGPTの画像生成機能のアップデートについて(ジブリ風画像の生成に感じるAIの危うさ)

更新日: 2025/04/24 公開日: 2025/04/07

はじめに

AI STUDIOを提供する当社は、日々AIの可能性と教育現場での活用法を模索しています。AIは間違いなく私たちの未来を形作る重要な技術であり、すべての人が理解し、活用する力を身につけるべきものです。

しかし、2025年3月25日にOpenAIのChatGPTが「4o Image Generator」をリリースし、「ジブリ風画像」を生成できるという話題が広がり、AIと創作物の著作権という根本的な問題について、改めて考えさせられています。今回はAI教育に携わる立場から、この問題の本質と今後の展望について考察したいと思います。

現状認識:何が起きているのか

ChatGPTの「4o Image Generator」を使えば、特定のプロンプトによってスタジオジブリの作品を彷彿とさせる画像を生成できます(ジブリ風に限った話ではありませんが)。技術的には素晴らしい進化ですが、これらの画像生成がどのようなデータで「学習」されたのかという疑問が湧きます。

もちろん、AIモデルの学習データについて企業は詳細を明かしていませんが、インターネット上のジブリ作品の画像や関連コンテンツが含まれている可能性は高いでしょう。問題は、それが著作権者の明示的な許可なく行われている可能性があるという点です。

なお、日本では、2018年の著作権法改正で『情報解析を目的とした複製』が合法化され、要件を満たせばAIの学習段階で著作物を学習させること自体はOKとされました。また、そもそも著作権法は、具体的な表現・作品を保護し、作風やアイデアは原則的には保護の対象外となります。そういった意味ではジブリ「風」の画像の生成は著作権法的にはセーフとなる見込みが高いです。

OpenAIの責任

現在のAI業界において、OpenAIと彼らが提供するChatGPTは間違いなく主導的立場にあります。その一挙一動が業界全体の規範となり得る以上、彼らの決断には大きな責任が伴います。

特に問題だと感じるのは、生成AI技術には著作権で保護された画像をベースにした生成を制限する技術的な手段が存在するにもかかわらず、それが適切に実装されていないと思われる点です。例えば、著名な作品や特定のアーティストのスタイルを検出するフィルター、有名キャラクターの特徴を認識するパターン検出、あるいは学習データから特定のコンテンツを除外する「ブロックリスト」の設定など、技術的に可能な対策は複数あります。

実際、他のAIサービスでは、明らかな著作権侵害を防ぐために、ユーザーが入力したプロンプトに特定の作品名やアーティスト名が含まれていないか自動チェックするシステムを導入しているケースもあります。OpenAIは確信犯的に著作権の問題を軽視している可能性もあると言えるでしょう。

開発者としては、「技術的に可能なことはすべて実現すべき」という考え方に魅力を感じることもあるでしょう。しかし社会的責任を持つ企業として、「できること」と「すべきこと」を明確に区別する姿勢が求められます。

パチモノ文化の助長とクリエイティブの未来

ジブリ風画像が生成・共有されることによって原作品の宣伝になるという意見もありますが、これはコピー商品を正当化するような論理です。クリエイターの立場からすれば、許可なく模倣された作品が広まることにメリットはありません。

特に懸念されるのは、素人目には「それなりに良い」と思える画像が、実際には原作の繊細さやクリエイター魂を欠いた「出来の悪いパチモノ」でしかないという点です。安易な模倣品の氾濫は本物の価値を下げかねません。

さらに深刻なのは、人間の創作活動とAIによる模倣には本質的な違いがあるという点です。人間のクリエイターが先人の作品から学び、リスペクトを持って新たな表現を生み出す過程と、AIがデータを機械的に処理して類似した出力を生成するプロセスは根本的に異なります。

古くから「真の革新は先人の肩の上に立つことから生まれる」と言われるように、単なる模倣ではなく、先人の業績を深く理解し、敬意を払った上で新たな価値を創造することが芸術や文化の発展を支えてきました。現在のAIはただ形を真似るだけで、本質的な理解や新たな創造につながっていません。

プライバシー問題の新たな側面

もう一つ懸念されるのは、ジブリ風画像が話題になってから、自分や他人の写真をアップロードしてジブリ風に加工する行為が増えていることです。これはプライバシー保護の観点から見過ごせない問題です。

ユーザーが気軽に写真をアップロードすることで、知らず知らずのうちに個人データがAIの学習材料となる可能性があります。自身のユーザーアカウントとアップした写真の紐付けもOpenAI側に提供していることになります。

確かに直接的にそうは言っていないものの、「魅力的な加工画像を提供するからあなたの写真をアップロードしてください」という暗黙のメッセージがユーザー体験設計に込められているように私には感じます。

個人的に驚いたのは普段、情報セキュリティについて語っているIT業界の人間も「自分の写真をジブリ風に加工してみた!」と言って画像をSNSにアップしたり、プロフィール写真に設定していたことです。

情報リテラシーが高い人ですら魅力的なサービスの前では個人情報の保護の観点は抜け落ちてしまうのだと強く感じた次第です。

AIと著作権の共存へ向けた提言

さて、AIと創作物の著作権問題をどう両立させるべきでしょうか。それこそChatGPTにプロンプトを投げてみたところ、以下のような方針が返ってきました。

1.オプトイン方式の採用
クリエイターが自らの作品をAI学習に使用することを明示的に許可するシステムの構築

2.フィルタリング技術の強化
著作権で保護された作品を自動的に検出し、学習データから除外する技術の開発と実装

3.利益配分の仕組み構築
AIが特定の作品スタイルを模倣・使用する場合、原作者への収益分配システムの確立

4.透明性の向上
AIの学習データに含まれるコンテンツカテゴリーを公開し、ユーザーが判断できるようにする

5.リミテーション機能の実装
特定のクリエイターやIPをAIが模倣しないよう制限する機能をユーザーが選択できるようにする

なるほど、これらを是非ChatGPT自体に組み込んでいっていただきたいなと感じますね。

悪貨は良貨を駆逐するなんていう言葉もあります。日本の優れた文化の一つであるアニメ・漫画は特にこの問題の主役になりやすい領域です。それらのクリエイターを保護するという意味でも、あるいはクリエイターと共にAIを発展させていくためにも、この「著作物の学習とその結果の出力」の問題については法整備を迅速に進めていただきたいと思っています。

教育者としての責任

私たちAI教育に携わる者には、技術の可能性を伝えると同時に、その倫理的課題についても次世代に伝える責任があります。

学校教育の現場では、生徒たちがAIツールを使いこなすだけでなく、「AIがどのようにコンテンツを生成しているのか」「それがクリエイターや社会に与える影響は何か」について考える機会を持つべきです。

AIリテラシーには技術的な操作スキルだけでなく、AIの出力を適切に評価し、倫理的に使用する判断力も含まれます。特に創作活動においては、AIを使うことで「楽をする」のではなく、人間にしかできない創造性を発揮するためのツールとして位置づける教育が重要です。

AI STUDIOでも今後さらに、こういった倫理的な問題などについて学べる教材の充実も今以上に充実させていくつもりです。学生たちが単にAIのスキルを身につけるだけでなく、その適切な活用とAI倫理を理解できる人材となるよう、教育現場とともに取り組んでいます。

おわりに:バランスのとれたAI社会へ

AIは間違いなく私たちの未来を豊かにする可能性を秘めています。教育、医療、科学、エンタメなど、あらゆる分野でAIの恩恵を享受できる社会を構築すべきです。

しかし、その発展が一部のクリエイターや権利者の犠牲の上に成り立つものであってはなりません。技術の進歩と創作者の権利、イノベーションと倫理のバランスを取りながら、持続可能なAI社会を目指すべきです。

OpenAIをはじめとする主要プレイヤーには、単に「できること」を追求するのではなく、「すべきこと」を見極める社会的責任があります。そして私たち教育者には、次世代がそうした判断を自ら下せるよう導く使命があると我々は考えています。

AIの力を正しく理解し、適切に活用できる社会の実現に向けて、私たちは今後も教育事業を通じて貢献していく思いです。技術の進化と人間の創造性が調和する未来のために、バランスの取れたAI人材育成を支援していきます。

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このブログを書いた人

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