AI人材育成

大学・専門学校のAI人材育成|国の制度・先進事例・外部プログラム活用のポイントを解説

AIの活用が急速に広がる中、大学・専門学校でも「早くAI教育を始めなければ」という声が増えています。一方で、「何から始めればいいかわからない」「実務経験のある講師が確保できない」「授業準備に膨大な時間がかかる」と悩む担当者も多いのが現状です。

この記事では、国の支援制度・先進大学の事例・外部プログラムの活用法まで、担当者が押さえておきたいポイントをまとめて解説します。

なぜ今、大学・専門学校にAI人材育成が求められるのか

「うちでもAI教育をやらなければ」という声は増えています。でも、なぜ今なのか、改めて整理しておきましょう。企業・広報・制度の3つの視点から理由を見ていきます。

企業が「AI活用できる人材」を採用段階から求めている

かつてAIスキルは「入社後の研修で身につけるもの」でした。しかし生成AIの普及により状況は一変し、企業は採用段階から「AIを使える人材」を求めるようになっています。AI・DX推進に注力する企業ほどその傾向は顕著です。

学生のAIスキルは就職先の選択肢に直結するだけでなく、授業を通じて早い段階からポートフォリオ(成果物)を積み上げられることも、学生のキャリア価値と学校の就職実績を大きく左右します。

就職実績・広報面での差別化になる

AI教育の充実は、学生のキャリア価値を高めるだけでなく、広報面での差別化にもなります。「AI・DX推進企業に就職できる学校」という実績は、入学者確保にもつながります。

「就職実績を伸ばしたい」「広報を強化したい」という目標と、AI教育への投資はまさに同じ方向を向いています。

国のAI人材育成政策が加速している

内閣府・文部科学省・経済産業省が連携し、大学・専門学校へのAI教育導入を支援する制度が相次いで整備されています。国を挙げてAI人材育成を進める流れは加速しており、各校がいち早く対応する意義は大きくなっています。

大学のAI人材育成を後押しする国の枠組み

「次世代AI人材育成プログラムに採択された大学はどこ?」という情報を探している担当者も多いでしょう。ここでは、大学・専門学校のAI人材育成に関わる主要な国の制度を2つ紹介します。

文科省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」

内閣府・文科省・経産省の3府省が連携して整備した「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」。「リテラシーレベル」と「応用基礎レベル」の2段階があり、全学生を対象としたAI基礎教育の普及を目的としています。

認定取得に向けた取り組みは全国の大学に広がっており、自校のカリキュラムを整備する際のロードマップとしても活用できます。
出典:文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」

JSTの「BOOST」と次世代AI人材育成プログラム

JSTが推進する「国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST)」の中のAI分野特化プログラムが、「次世代AI人材育成プログラム」です。

「博士後期課程学生支援(事業全体で計600人程度を支援予定)」と「若手研究者支援(事業全体で計200人程度を支援予定)」の2つに分かれており、東京大学・京都大学・大阪大学など主要大学が採択されています。

主な採択大学の一部を以下に挙げます(※全プロジェクト一覧はJST公式サイトで確認可能です)。

大学名プログラム名(概要)
東京大学次世代知能社会を先導する高度AI人材育成プロジェクト(BOOST NAIS)
東北大学東北大学高等大学院次世代AI人材育成プロジェクト
名古屋大学(東海国立大学機構)TokAI BOOST:東海国立大学機構次世代AI人材育成事業
京都大学京都大学大学院教育支援機構次世代AIプログラム
大阪大学新興・融合研究を推進するマルチスタックAI人材育成プロジェクト
九州大学「基盤」と「応用」の相乗効果で未来を拓く高度AI人財育成プログラム
立命館大学立命館先進研究アカデミー学生フェローシップ/次世代AI分野プログラム(RARA×BOOST)
北陸先端科学技術大学院大学未来創造次世代AI博士人材育成プログラム

BOOSTは「博士後期課程学生や若手研究者の高度専門化」を目的としており、学部生向けの教育とは対象や役割が異なります。学部生に広くAI教育を普及させたい場合は、前述の文科省認定制度が主な枠組みになります。

2つの制度の主な違いは以下のとおりです。

制度名JST 次世代AI人材育成プログラム(BOOST)文科省 数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度
主な対象博士後期課程学生・若手研究者全学部の学部生 
目的高度AI専門人材の育成AIリテラシー教育の普及・認定
認定区分プロジェクト採択型教育プログラムの公的認定

出典:JST「国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST)」

大学・専門学校のAI人材育成取り組み事例

「他校はどんな取り組みをしているのか?」は、自校を検討する上で欠かせない情報です。ここでは、各大学・専門学校の具体的な事例を見ていきます。

東京科学大学|4段階の全学AI・データサイエンス教育と産学連携

東京科学大学は、「データサイエンス・AI全学教育機構」を設置し、全学横断的な教育体制を構築しています。特筆すべきは、全学生対象の「リテラシーレベル」から、最先端技術に触れる「エキスパートレベルプラス」まで、以下の4段階で体系化された教育プログラムです。

リテラシーレベル: DS・AI活用の基礎能力
応用基礎レベル: 課題解決に向けた活用能力
エキスパートレベル: 高度な専門知識と実践スキル
エキスパートレベルプラス: 最先端のDS・AI技術の修得

 産業界と連携した「共創型エキスパート」人材の育成を掲げ、BOOSTプログラムへの採択など、研究者育成から学部教育まで一貫したAI教育体制を実現しています。
出典:東京科学大学「データサイエンス・AI全学教育機構」

関西学院大学|文系・理系を問わないAI活用人材育成プログラム

関西学院大学では、日本IBMと連携した「AI活用人材育成プログラム」を展開しています。このプログラムの最大の特徴は、「AIを業務や課題解決のツールとして使いこなす人材」という育成目標を明確に掲げている点です。

文系・理系・初学者を問わず受講できるオンライン型として設計されており、高度なエンジニア育成だけでなく、あらゆる学生が「AIを道具として使いこなす」ことを目指すこのアプローチは、多様な学部・学科を持つ教育機関にとって非常に参考になる取り組みです。
出典:AI活用人材育成プログラム(関西学院大学)

名古屋大学(東海国立大学機構)|AI専門×AI活用をかけ合わせる「バディ制」

名古屋大学(東海国立大学機構)では、「TokAI BOOST」としてAI人材育成プログラムを展開しています。AI研究に特化する「AI専門学生」と、自身の研究分野でAIを活用する「AI活用学生」の両者をペアで育成する「バディ制」が最大の特徴です。

「AI専門」と「AI活用」の学生が互いに補い合うことで、専門性と実践力を同時に養えるのが強みです。産学のメンター配置や「学際ゼミ」で最新AI動向を継続的にキャッチアップする仕組みもあり、実践的な人材育成のモデルケースとして注目されています。
出典:東海国立大学機構 名古屋大学「TokAI BOOST」

北海道大学・東北大学など|全学部を対象としたAIリテラシー教育

情報系・理系学部だけでなく、全学部対象のAIリテラシー教育に取り組む大学が増えています。

北海道大学では全学部を対象に、数理・データサイエンスの基礎から社会課題への応用まで段階的に学べる体制を整えています。

東北大学の「AIMD教育プログラム」は、文系・理系を問わず全学部生が対象です。文科省の「リテラシーレベル」認定も取得済みで、BOOSTプログラム採択校として博士後期課程学生の高度AI人材育成にも取り組んでいます。

これらの大学に共通するのは、「AI教育を一部の専門学部の枠にとどめない」という姿勢です。専攻分野に関わらず、全学生がデータ駆動型社会の素養を身につける「全学横断型」の教育が、これからのスタンダードとなりつつあります。
出典:内閣府「国内大学等において実施されているAI等教育プログラムの主な事例」/東北大学「AI, Math & Data Science / AIMD教育」

【専門学校】新潟コンピュータ専門学校|AI活用率50%未満→95%へ(AI STUDIO導入事例)

専門学校でもAI教育の取り組みが広がっています。
新潟コンピュータ専門学校では、AI教育の立ち上げ当初、教材準備・カリキュラム構築の負担が課題でした。そこでAI教育パッケージ「AI STUDIO」を導入したところ、授業準備にかかる工数が約50%削減され、学生のAI活用率も1年間で50%未満から約95%へ向上するという劇的な変化を遂げました。

取り組みはさらに発展し、当初はAI機能を一部付加する程度だったPBL(プロジェクト型学習)が、「AI面接練習アプリ」や「AI Vtuber」といった本格的な開発プロジェクトに進化。学生が主体となって開発した作品を企業展示会で発表するまでになっています。教員の負担軽減と学生の成長を同時に実現した事例です。

【導入事例の詳細はこちら】

AI人材育成の導入でつまずきやすい3つの課題

多くの教育機関がAI導入に意欲を見せる一方で、実際の現場では「重要性は理解しているが、一歩が踏み出せない」という声が多く聞かれます。その背景には、共通する3つの課題があります。

課題① AI分野の専門知識を持つ教員・スタッフが少ない

AI教育を自前で立ち上げる際、最もよく聞かれるのが「誰が教えるのか」という問題です。AIの進化スピードは速く、教員が個人の独学だけで最新の知見を追い続けることには限界があります。また、情報系以外の学部まで含めた全学横断の教育体制を組む際、横展開を主導できる人材は極めて限られているのが現状です。

課題② 生成AI・著作権・最新トレンドへの継続的な対応

「昨年作成した教材が、すでに時代遅れになっている」というのは、AI教育において頻発するリスクです。特に生成AIの進化速度や、文化庁が議論を進める生成AIと著作権に関する考え方を公表するなど、学内外の環境変化はめまぐるしいものがあります。常に最新の内容を担保し、教材をアップデートし続けることは、現場の教職員にとって非常に大きな負担となります。

課題③ カリキュラム設計から教材準備まで工数がかかる

ゼロから設計するとなると、カリキュラム検討・シラバス作成・教材制作・小テスト準備まで膨大な工数が発生します。通常業務と並行するのは現実的に難しく、「やらなければならない」という認識がありながらも、準備のハードルが高く、導入が後回しになってしまうケースが少なくありません。

外部プログラムを活用してAI人材育成を進めるメリット

これら3つの課題をまとめて解決できるのが、外部のAI教育プログラムの活用です。専門家が設計したプログラムを使うことで、自前で全てを揃える必要がなくなります。

教員の知見不足をカバーできる

AI教育のプロが設計した教材を活用すれば、担当教員が必ずしもAIの専門家である必要はありません。授業用スライドや詳細な説明原稿がセットになっているため、初めて教壇に立つ教員でも迷うことなく授業を進行できます。
「誰が教えるか」という最大の壁を乗り越えられることが、外部プログラム活用の最大のメリットです。

最新情報への対応を外部に任せられる

提供事業者が教材のアップデートを行うため、生成AIの新機能や著作権ルールの変更にも自分で対応する必要がありません。自校で教材をアップデートし続ける手間がなく、常に最新の内容を学生に届けられます。

カリキュラム設計から教材準備まで工数を大幅に削減できる

教科書・授業スライド・補助教材・小テストが一式そろうパッケージなら、個別に制作する手間がかかりません。新潟コンピュータ専門学校では導入後に授業準備の工数が約50%削減され、浮いた時間を学生指導やカリキュラム改善に充てられるようになっています。

実践的な学びの質を担保できる

就職活動でそのまま武器になるポートフォリオ(成果物)が授業内で作成可能です。学生は学びながら自分のスキルを客観的に証明する実績を作れるため、企業への就職実績向上につながります。

大学・専門学校向けAI教育パッケージ「AI STUDIO」

ここでは外部プログラムの一例として、弊社が提供するAI教育支援サービス「AI STUDIO」を紹介します。本サービスは、大学・専門学校でのAI教育導入を実務面から強力にサポートするオールインワン型の教育パッケージで、届いたらすぐに授業を始められる設計です。
※民間企業による教育支援サービスであり、国の認定制度や補助金事業とは独立したものです。

【AI STUDIOの特長】

  • AI開発会社監修による実践的な内容
    AI開発・運用を手がけるプロフェッショナルが監修した内容で、現場で使えるスキルを重視した教材になっています。

  • レベル別の柔軟なカリキュラム
    「文系」「理系」「エキスパート」の3レベルで構成されており、学科・コースごとのニーズに合わせて柔軟に組み合わせることができるため、IT学科だけでなく、マンガコースでのAI共創授業や美容系専門学校でのセミナーなど、非IT学科におけるAI教育導入の実績も豊富です

  • 手厚い導入後サポート
    AI STUDIOでは、教材を届けて終わりではなく、導入後も継続して学校をサポートする体制を整えています。

    ・     契約期間中の教科書・資料更新は全て無償(最新情報への対応コスト不要)
    ・     最新AIニュースを解説したメールマガジン配信
    ・     授業前の先生からの相談・質問への対応
    ・     契約校限定の無料オンラインセミナーへの招待
    ・     企業・自治体との連携協定の締結や、メディアへの露出・プレスリリースの発信支援(広報支援)
    ・     学生用アカウントの個別発行や契約の手間を解消する「AI Hub(ハブAPIセット)」を独自提供(※理系教材契約校対象)

    目的や対象学生に合ったプログラムをご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。

まとめ

文科省の認定制度やJSTのBOOSTが示すように、大学・専門学校のAI人材育成は「やるかどうか」ではなく「どうやるか」の段階に入っています。

先進的な学校はすでに全学横断型の仕組みを動かしており、「AI・DXに強い学校」としてのブランド構築や、就職実績の差別化につなげています。一方で、教員不足・教材の継続更新・準備工数という3つの課題は、現場の大きな壁となっているのも事実です。

外部プログラムを活用すれば、これらの課題をまとめて解消しながら学生が就職活動で武器にできる「ポートフォリオ(成果物)」を作成できる質の高いAI教育をスピーディーに始められます。「まず何から」と迷っている場合は、一度外部の専門家に相談してみることをおすすめします。